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南房総に移住して

生まれ育った東京を離れ、2021年6月に千葉県南房総市の岩井という地域に引っ越してきました。東京では雑誌の編集や企業の広報職として働いてきましたが、初めての田舎暮らしをきっかけに「ずっとやりたかったことをやろう」という気持ちになったのです。

それが「風の図書室」。全国の本好きが所蔵する、「特別な一冊」だけを寄贈で集めるというコンセプトが形になるのか不安もありましたが、長い目で見ていれば来るべき本は必ずここにたどり着くと信じられたのです。

本で想いを保存する

風の図書室を始めようと考えた時にまず決めたのは、「人の想いを保存できる場所にしたい」ということでした。私自身の身内の死や短い期間ですが葬儀の仕事に携わる中で、人の死がままならないものであると骨身に染みたのです。

どんなにいきいきと暮らしていた人もいずれはみんな亡くなり、私たちがここに生きていたことは忘れ去られる。それは決して悪いことではないけれど、もし望む人がいるのなら、その人が特別と感じた本を通して魂のようなものを保存し、次に引き継がれる機会をつくりたいと思ったのです。

特別な一冊が風になる

このように書くと何とも死の匂いが漂う図書室のように感じられるでしょうが、集まった本はどのようなものでもすべて寄贈者の「生」。暗さではなく、むしろ煌めきを感じられるものになるでしょう。

一冊の本に触れた当時のあなたを残す思い出の作業として、また場合によっては弔いの場、グリーフケアとしても活用していただければ幸いです。あなたとその一冊の特別な関係は、きっと見知らぬ誰かの心を揺らす風となることでしょう。

原っぱのイメージカット

「風の図書室」管理人/笹木