11月の南房総は風が吹き荒れています。洗濯物はしっかり止めていても飛ばされてしまうし、家も何となくゆらゆら揺れているような。噂では聞いていたこの地域の風物詩である大風が、想像よりも本気のもので驚きました。

しかしその分、風が強く吹けば吹くほど、夜空に瞬く星の数が増えることを発見。さらに海の向こう、はるか遠くに見える雪化粧の富士山も風によってその輪郭をクリアにさせています。

「風の図書室」という名前を考えた時、風のように実態のない何かを感じられる場所にしたいという思いがありました。見えないものを見たい。見えなくなってしまうものを残したい。それこそが私を救うものだと確信があったのです。

そして吹き荒れる大風。

実態のない風はぼんやりと「それ」を示してくれるものと思っていた私に、大風は想像以上にはっきりとこれまで隠していたものの姿をさらしてくれました。

そんなふうに、風が大気が、人が気持ちが動くことで、いっきに見え動き、変わっていくことがあるのだなと。その瞬間を一回でも多く感じたいと思う、美しく強い房総の秋です。