自分の親や子どもといった、どうしたって特別な感情を抱く相手のことを、もちろん誰よりも大切に思っていて、それは「愛している」という表現で絶対に間違いがないのだけれど、冷静に、冷静に自分の心に向き合うと、その相手のことを人として「好きじゃない」と確かに感じる自分に気づいてしまった。
親に対してそんな気持ちをもっているのではないかなという友人が何人かいて、私自身も自分の身近な人に対してチラッと感じたことのある思い。
私は子どもがいないので、親に対してのサンプルしかないのだけれど、想像するに自分の子どもにそう感じるってきつそうです。
温和に言えば「相性」などと言えるのでしょうか。子どもに対しては自分の教育のせいでという面も少なからず考えてしまうだろうし、二重でしんどそう。自分の思い通りにならないから好きじゃないとか、親不孝者で嫌いだとかならまだわかりやすいけれど、人としてというか、実はなんか嫌いなタイプって、それが愛するべき対象なら尚のこと直視できない感情なのではないかな。
相性は作り上げるものでもあるし、始めから決まっているような絶対的な感覚のようなものでもあるし、合わないなら離れればいいし、一生合わないままだというわけでもないし。
この世に存在もしない我が子との相性に悩んでいるようですが(実際少しそうかも)、つらつらとこんなことを書いているのは、何てことはない、息子を亡くした母親についての小説を読んだからなだけなのです。
愛していたけれど人としては好きじゃないと感じていた息子が、鮫に食べられて死んでしまったのです。
本読みの責任と習性に則って、私も愛しているけれど好きではない人を鮫に食べさせてみました。やっぱりとても悲しくて、愛しているのだなと思っただけです。