小川洋子さんの『薬指の標本』という、1998年に出版された本が好きです。映画化もされたのでご存知の方も多いと思いますが、「風の図書室」が目指すのは、あの本に出てくる標本室なのだと言ったら引かれてしまうでしょうか。

「絶対に寄贈なんかするか!」と思う人もいるかもしれませんね(笑)。そうです、ちょっとしたホラーなのです。

あらすじはレビューサイトで見ていただきたいのですが、ざっと話すと、弟子丸という特徴的すぎる名前の標本技術者が運営する標本室で働くある女性の日々についてのお話です。そこに標本にしてほしいと持ち込まれる品々はすべて個人の思い出のもの。それも楽譜に書かれた音や愛鳥の骨、火傷の傷跡など不思議なものばかり。そしていつしか女性も・・・・。

さまざまな読み方があるでしょうか、私個人としては、その標本室の役割に強い憧れを持ちました。個人的な思い出を標本という形で完全体にしてくれ、しかもいつまでも預かってくれる場所が私にもあったら。自分で持っていると壊してしまったり、失くしてしまったり、もしくは一時の感情で捨ててしまいたくなったりする大切なものって誰しもないものでしょうか。

しかも標本にするということは、「時を止める」ということ。私たちが生きている現実の世界とは切り離し、永遠にしてあげられるのです。

風の図書室の本たちも、持ち主が大切な思い出を永遠にするために切り離したものであってほしいなと思います。

こう書いているうちに、風の図書室に寄贈してくれるものは本ではなくてもいい気がしてきました(笑)。何か要望がありましたらご相談ください。

今回の記事は、世の小川洋子ファン、強いては『薬指の標本』ファンに届けと願っています。